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2014年9月20日

加賀片山津温泉街湯

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先日加賀にある2013年に完成した谷口吉生氏設計の「加賀片山津温泉街湯」を訪れました。
建物は構造体がカーテンウォールのマリオンとなっていている点では1995年に同氏の設計によって完成した「葛西臨海公園展望広場レストハウス」に近い印象の建物でした。葛西が幅75m,高さ11m、加賀が幅42m,高さ10m。規模が2倍ほどあり、20年近く前の建物である葛西のほうが、構造体/マリオンの印象は細く華奢な印象を受けたのは、加賀市の積雪量125cmと、江戸川区の積雪量40cmの違いにあるのだろうと思いました。北陸の街の温泉であることを考えると、葛西で感じたヒリヒリとするような高い緊張感の建物ではなく、少し優しい印象を受けました。
磯崎新氏が1983年に発表した福井県の勝山市に建てたRC造の住宅「中山邸」の発表時の文章に「雪国。そこにはまったく異なる建築的対応が必要とみえるのだが、コンクリートの構造体であるかぎりでは、結露以外に変わった条件はない」と述べられています。確かに住宅をコンクリート造でつくる場合、日本のどこが敷地であってもつくりに大きな違いはないように思います。ただし谷口建築の極限まで構造体の断面を削ぎ落としていくタイプの建築の場合(例えば葛西やフォーラムエンジニアリング青山ビル)は、雪国と、雪が降らない地域では立ち上がる建物に大きな違いがでるようにも今回感じました。私も両場所で平行して設計しているため、意識して設計を行う必要があると改めて感じる良い機会にもなりました。
施設には地元の利用者がたくさんいました。世界でも屈指の建築家である谷口氏の建築が美術館や博物館などの文化施設ではなく、北陸の田舎街に、お年寄りや子供など幅広い年齢層の利用者がある街湯として実現したのはとてもよいことだ思いました。
11月15日からは[谷口吉郎・谷口吉生]展が金沢市民芸術村で始まり、9月13日には京都国立博物館「平成知新館」が開館しています。どちらもまた訪れたいと思います。