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2016年10月 9日
平成28年日本建築士会連合会賞 優秀賞
弊社で設計監理を行いました「日南市油津商店街多世代交流モール」が平成28年日本建築士会連合会賞の優秀賞を受賞しました。
本施設は商店街をはじめとする中心市街地再生の拠点となる施設であり、商店街や日南市の皆さんの様々な取り組みを含めて今回評価頂けたと思っています。
本賞は一次の書類審査と二次の現地審査を行い優秀賞5点,奨励賞数点が選出されるもので、二次審査の現地審査では建築家の岸和郎氏、竹原義二氏をご案内させて頂きました。お二人から感想や助言を直接頂く事ができ貴重な時間を頂きました、お忙しい中遠方まで来て頂きありがとうございました。岸氏には選評を書いて頂きましたので添付させて頂きます。
選評
地方都市の衰退しつつあるアーケード商店街再生の起爆剤として計画されたプロジェクトである。往時は繁栄していた商店街も時代の流れとともにその長さも短くなり、また建ち並んでいた商店も歯抜けとなり、アーケードに面したファサードからは部分的に青空が覗けるようになる。そんな商店街を象徴するかのように、すでに何年間も閉鎖されたままになっていた旧スーパーマーケットの巨大な建物のリノベーションが本計画である。
その旧スーパーマーケットの立面は長さ60mあり、商店街に面するファサードとしてはスケールオーバーである。設計者はその立面の中央に屋外空間としてのヴォイドを挿入し、一つの大きすぎる建物であったものを、二つの建物とその中央には屋外モールの空間を配置することで三つの空間へと変化させた。
右側のブロックには飲食店を6店舗配置し、屋内、屋外ともに客席は自由に着席できる形式であり、アジアの都市にあるナイトマーケットやフードコートのようなカジュアルな形式をとりながら、現代の空間として効果的にデザインされている。左側のブロックは情報発信やNPOの拠点として、多目的に使用できるように計画されており、右側のブロックの飲食空間がもたらす賑わいと、うまく対応している。
このモールの屋外空間が商店街に挿入され、商店街の流れと直行方向に光や風、それに商店街の外部に広がる都市の雰囲気がアーケード内部に流入するようになったことで、これまでは単に商店街の歯抜けに過ぎなかった空地が積極的に意味を持つようになり、児童の遊び場として整備されたりすることで、直線に過ぎなかったアーケード商店街が左右方向に広がりを持ち始め、新しい入居者も増え始めたと聞く。
一つの小さなプロジェクトが商店街全体の在り方を変える力を持っていること、言い換えると一つの建築が都市さえも変えることができるという点を改めて思い知らせてくれた作品であることを評価し、顕彰する次第である。 (岸 和郎)